2020年7月9日木曜日

PD121 TONEARMBASE

LUX PD121 / 131 トーンアーム・ベース

カメラのレンズのように、バヨネットマウント式。発売時のウリは、アームベースを簡単に交換できる、と言うことだったようだ。

実際にはそれほど簡単に交換できない。アームを搭載して、シャシーに取り付けるのはレンズのような軽いものを付け替えるのとはわけが違った。

「トーンアームケーブルベースを交換できないことはない」

程度に受け取った方がよい。シャシー側のスプリングでベースを密着させる。そのため、脱着には大きな力が必要だ。トーンアームを取り付けたまま、アームベースを取り外そうとすると、アームを壊す恐れがある。脱着前には、必ずトーンアームを取り外す。

アームベースの爪は割れていることが多い。脱着時に大きな力が加わるせいだろう。私が扱った経験では、半数ぐらいのベースは爪が割れている。

状態にもよるが、このの爪が割れていると、アームベースとシャシーとの密着が甘くなる。アームベースがぐらつくのだ。その場合は厚紙でガスケットを作り、アームベースとシャシーの接合面に貼り付ける。1から2ミリ程度の厚さでよい。これでしっかりアームベースは固定できる。
























PD121 with TB-S

LUX PD121。アームベース、TB-Sを標準添付して出荷された。側面から見て、シルバーに輝いて見えるのがPD121。131は、アンダーシャシーと同じグレーで塗装されている。


























PD131 UNDER CHASSIS

フォノモーターと、トーンアームを一体として結合したい、というデザイナーの意図が読み取れる。上記の、比較的ひよわなアームベースのため、この初期の目的が実現されているかどうかは意見が分かれる。

真鍮のブロックから削り出された、重いアームベースをラックスは後に供給した。前述の「ひ弱な」アームベースの問題に対する改善だろう。

モーターの取付ボルトが3本なので、PD131とわかる。それ以外は、121/131の区別は出来ない。モーターの制御回路は、それ自身の底面に組み込まれている。なので、「買ってきた」OEMモーターを、シャシーにそのまま組み込んだだけ、と言える。
























PD131 WITH SME 3009 S2 IMPROVED ON TB-S

PD131に載った3009。アームベースはTB-S。トーンアーム自体の美しさを撮影するのならこのフレーミングだが。実際に、ユーザーがレコードを演奏する差には、この角度で見ることはないだろう。

























PD121/131 ベースプレートの例

TB-G、スピンドルからの距離が230mm、取付穴が約31mm。一番一般的なトーンアーム取付のための寸法だ。DA-305、309、FR-64等のアームが使用できる。

TB-S、SME 3009シリーズ用。S2 IMPROVED、S3、3Sで使用できる。

アームベースの在庫は必ず聞いて下さい。貴重なので、あまり売りたくはないのですが、無いわけでもありません。「何々のアームが使いたい」「こんなアームを使いたい。どのようなアームがいいですか?」等々。

このアームベースの形からわかること。PD121/131は、コンパクトなシステムです。実際に使用できるのは、実効長245mmクラスがせいぜい。SAECのWE-308では、演奏中にダストカバーを閉じられない。

























BROKEN BASE PLATE PD121/131

ベースプレートを裏面から見た。アルミの板を、プラスチックで裏打ちしている。大変頑丈に作られていることがわかる。それでも、爪が割れている。
























アームベースの爪が割れ、アンダーシャシーとの噛み合いが甘くなってしまった場合。この接合面にガスケットを貼り付ける。何でも良い。厚紙でも、プラスチックでも。あまりきつくはまると、2度と取り外せなくなる。私は森永DARSの箱を切り、2枚から3枚重ねて貼り付ける。それでぴたりと納まる。

2020年5月18日月曜日

レコードプレイヤー、整備を受けています

ヤフオクで出品した内容に準じた整備です。

電気回路、メカニズム、外観、すべてを整備した状態です。

「故障箇所だけ直して欲しい」というオーダーは、受けません。もちろん、詳細は話し合って決めますが。出荷後何十年も経過した機種です。ユーザーが気になっている故障箇所が特定の一箇所だけであっても、それだけ整備してお終い、と言うことはあり得ません。

外観も手を加えます。私が係わったレコードプレイヤーを、汚いままで納品したくない。キャビネットやアームには、30年、40年分の汚れが堆積しています。それも手を付けます。雑巾でささっと拭いて、というのはしたくないんです。単なるクリーニングですが、それをするのに数時間から1日、2日3日かかることもあり得ます。

費用。だいたい大ざっぱに考えて、2万から3万円は請求します。SL-10等、3万程度は覚悟して下さい。実際にかかる費用は、現物を見なければわかりません。もっとかかることもあり得ます。さらに、往復の送料がかかります。

私の整備内容は公開しています。その内容と費用に納得したらオーダーして下さい。


1 問い合わせ 1200.tsl@gmail.comhttp://twitter.com/sl_1200a/

2 交渉、オーダー受注。

3 依頼人、レコードプレイヤーを着払いで発送。

4 着手金、1万円を振込。整備費用に充当します。点検後&見積後、オーダーキャンセルでも返金しません。

5 整備費用報告。合意の場合着手。期間、10日から2週間程度。

6 修理完了報告。整備費用の振込。(着手金を差し引き)

7 依頼人にレコードプレイヤーを着払いで返送。


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整備に「完全」はありません。整備を行ったことにより、納品後に故障が発生することはあります。その場合の修理費用は話し合いによって決めます。追加費用がが発生することもあります。このような細かな整備を繰り返して、より完全なものに近づきます。作業者として善処しますが、このようなことが起こりうると、予め心に置いて下さい。


「SL-****の整備に2万もかかるなんて取りすぎだ。ヤフオクで、それ以下で売っているではないか」

商品としての販売価格と、客からオーダーを受けて整備修理を行うのは全く別のことです。ヤフオクでは、買い手の反応にあわせて、価格を下げています。正直、例えばSL-1301を3万以下で売るのはダンピングでしかありません。整備&商品化には10時間以上かかっています。

さらに、特定の顧客のプレイヤーを整備するには、やりとりにかかる手間暇が膨大になるのです。なので、「ヤフオクの商品価格より高いじゃないか」という疑問には「そういうものです」と答えざるを得ない。

正直、私の作業内容で2万3万が高い、というユーザーとはつきあいたくないんです。作業時間は、最低10時間程度かかります。実際には、数日かかっています。例えばダストカバー傷んでいて磨いていたら、半日かかるのはざら。ビス1本の頭を磨くのに数十分かかるのも普通。そういう地道な作業を積み重ねて、「ヤフオクで一番良いコンディション」と胸を張って出品しています。

これで「2万3万が高い」のでしょうか。自分の時給で考えたら、いくらになると思いますか? それなら自分でやってみればいいのに。

自分に出来ないことだから、その価値を認めて自分の労働して得た金銭で依頼するのです。それを認識して欲しい。1日、2日と身を粉にして作業します。その対価としての「2万から3万程度」を認めない、価値がわからない人とは縁がありません。

実際問題として、テクニクスのレコードプレイヤーを、外観から中身まですべてレストレーションして受けるようなショップは存在しません。もしあったとしても、私の倍は請求すると思う。














































































2018年3月24日土曜日

Stax UA-7 concept

UA-7コンセプト、カタログより

http://20cheaddatebase.web.fc2.com/needie/NDSTAX/UA-7.html
http://20cheaddatebase.web.fc2.com/LibSTAX/UA-7K.html

UA-7の高音質に驚き、資料を調べた。当時のカタログにコンセプトが子細に掲載されている。内容は、淡々とトーンアームのあるべき姿を述べ、それに向かってUA-7を開発したことが述べられている。

長年トーン・アームやレコードプレイヤーに携わり、何となく漠然と理解していたことが整理され、目が覚めた気分だ。ますますUA-7が好きになった。



























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ハイ・コンプライアンスのカートリッジを軽針圧で使用する場合にも追従性を悪化させない。これを設計の基本として開発された新型アーム、UA-7/UA-70。

UA-7/UA-70の追従性 実効質量

UA-7/UA-70の可動部(シェル→パイプ→軸受)は剛性の大きい軽合金の巧妙な加工により、アームに起きやすい有害な共振を根絶すると同時に、内外各種のカートリッジと組み合わせても実効質量の値は充分に小さく、最も高い追従性が得られます。

実効質量とカートリッジのコンプライアンスで決まる低域共振周波数f0(エフゼロ)は、低すぎればレコードのソリ/偏芯の悪影響を受け、高すぎれば低域再生に問題が起きますが、UA-7/UA-70ではf0は約7~12Hzという理想的な範囲に納まります。

実験のためにシェルに適当な重りを乗せ、実効質量を一般のアームなみに増加してみると追従性が目立って悪くなります。

こうしてみると、軽量アーム、UA-7/UA-70が抜群の追従性をもっていることがお分かりいただけましょう。


UA-7/UA-70の追従性 回転感度

UA-7/UA-70は、尖端が50μRに研磨された精密ピボットによる1点支持と、ボールベアリング外輪で左右傾斜を規制するスタビライザーを組合わせた、軽量2点支持軸受で動作します。

このユニークな方法は動作が極めて鋭敏、極細リード線(50μφ)の摩擦抵抗も含め5mg未満の高感度を示します。回転感度の良否でもUA-7/UA-70は、内外のいかなるアームとも一線を画しています。




構成部品の特徴1 パラ・ショック・ダンパーを採用した(軸受構造)

音響的フィードバックに対し2個のダンパーが、シリーズ・ダンピング効果を発揮し針圧0.1gでもトレースできる能力をもっています。


構成部品の特徴2 クィック・バランスを実現した(シングル・ウェイト方式)

1個のメイン・ウェイトと、その上を前後にスライドするリング・ウェイトで、自重の異なる内外のカートリッジ全てをカバーし、バランスも針圧もきわめて容易に決定できます。(ただし、オルトフォン旧型SPU-Gのみ付属サブ・ウェイトが必要)


構成部品の特徴3 テーパード・リブで堅牢無比の(軽量ヘッド・シェル)

軽合金ダイキャスト・シェル、テーパード・リブにより、著しく強度を増し、捻れ共振は絶無。強度対重量の比がいかなるシェルよりも大きい、理想的シェルです。


構成部品の特徴4 ピボット・ローラーによる(インサイドフォース・キャンセラー)

S字型パイプは、従来よりオフセット角の最適値で選んであるため、インサイド・フォースの値はふううより小さいのですが、特にハイ・コンプライアンスのカートリッジを軽針圧で使うときのために、高感度キャンセラーを開発。一層トレース性能が高まりました。

バランスを取るとき、横流れを防止するため、キャンセラーを簡単にロックすることもできて、使いやすさの点でも申し分のないものです。この他にも、アーム・リフトの精度向上、ノイズ・レスリード線の採用、シェル指掛けの合理的デザインなど、全面的な改良が施されています。

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2018年1月26日金曜日

DD-5 SPEED CONT. TROUBLE

MICRO DD-5の故障事例。

70年代のレコードプレイヤーを扱っているが、故障のクレームを受けた記憶は殆ど無い。ゼロではなく、3、4件の事例を覚えている。製品化して出荷した数からすると、信頼性は高いと自負している。

ただ、商品化中に故障が判明して断念、と言う事例はある。SL-10も、SL-1200もあった。出品時にきちんと商品化したプレイヤーの信頼性は低くはないのではないか、と思っている。

DD-5、「速度がノー・コントロール状態になる」という事だった。もちろん整備は行っていて、手元にあったときには何の不安もなかった。

ユーザーがビギナーのため、状況がよくわからなかったが。「33回転だけ、異常が出る」ということで、故障を確信し、返送を受ける。

「45回転は問題ない。33回転が異常」というのなら、故障箇所はわかる。サーボ・アンプ以前の、抵抗回路の異常だ。アンプ本体の半導体、トランジスタやダイオードの劣化なら、どの回転数も異常になる。

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チェックを始めると、1時間以内に異常が出た。33回転が極端に早くなってしまう。33の抵抗値が極端に減少するためだろう。





















速度切り替えS/Wを分解、清掃する。エレメントの劣化のため、使用中に抵抗値が変化することは起こりうる。密閉型のS/Wのため、分解は困難。正直、したくない仕事。手順を踏み、一つ一つパーツを剥がすと、「ぽろ」とバラバラになる。再組立を考えると、「ぽろ」は有り難いとは思えない。エレメントに、#3000程度のペーパーを通す。

さらに、速度微調整VRを新品交換。10KΩ。もちろん、事前に調整したパーツだ。

さて、両者を交換し、再テスト。異常はまったく改善しない。意を決して、モーター制御基板上の速度微調整VRを交換する。




























問題のVRを剥がそうとしてのだが、軽く力を加えるとバラバラになってしまった。20KΩ、設定値は約9.2K。半田を剥がし、在庫品と交換する。

組み立てて走行テスト。全く問題なく回転する。やはりこのVRの劣化だったのだろうか。大変まれなケースだが、「よくあること」との説もある。
人の手に触れるパーツではないので、劣化原因は不明。熱による、金属疲労なのか。

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さて、再出荷。これでお終い、と思っていたが。「また同じ現象になる」というクレームを受け、再度返送してもらう。「33も45も異常だ」と言うことなので、どうしようもないのか?回路基板の半田不良か、半導体の劣化、が予想できるが。正直、こうなると修理コストはペイしないのだ。

とりあえず、自分のメイン機と交換し、日常的に使ってみる。全く異常は出ない。

「そもそも、異常は出るはずはないのだ」とうそぶいてしまう。

しかし異常はあった。10時間以上回転させたあげく、やはりノー・コントロール状態。異常に速度が速くなるのは33回転のみで、45回転は異常は出ない。速度切替えS/Wを何度も操作しても変化はない。電源を切り、30分ほど冷ますと、まったく正常になる。その後は、10時間以上のテストをしても正常だ。

やはり、速度微調整回路、周辺部の配線不良、半田クラックなのでは?

念のために、速度切り替えS/W、速度微調整VRの配線をやり直す。その上で、モーター制御基板上の速度微調整VR周辺を見直した。

交換したパーツなので、本来異常は出るはずはない。念のために、33回転のVRを基板から剥がす。その際に、パターンの剥がれを発見する。前回、VRを剥がした際に壊してしまったのだろう。この部分の導通が不完全なため、回転中の熱で基板全体が熱せられると抵抗値が異常になったのではないか?

ユーザーは、45回転の異常もクレームしている。45回転も異常だとしたら、33回転のVR半田エラーが原因という仮説は成り立たない。

しかし、現状で33回転のみの回転が異常なら、この半田エラーが原因としてつじつまは合うのだ。

そもそも、45回転のVRも劣化していたのではないか?そのために、ユーザーの使用中には異常が出た、と言う可能性はある。

結局、33回転、45回転の制御器盤上VRを交換する。33の傷んだパターンはジャンパー線を飛ばす。その上で、周辺パターンを注意深く再半田する。この問題が原因なら、これで完了のはずだ。

































半固定VRを交換した、モーター制御回路基板

組立を行い、この状態で20時間以上ランさせているが、異常は出ない。これで解決としたいところだ。

2017年12月24日日曜日

オーディオピープル vol.9 テスト PS-3750

オーディオピープル vol.9 テスト PS-3750

http://5551.verse.jp/pub/audiopeople_vol9/PS-3750_test_audiopeople_vol9.pdf





















動負荷変動特性テスト アタック音の再生に対し、どれだけ回転数が影響されないか。
回転数が変動しても、どれだけスムーズに復帰するか、を見たテスト。

DP-790並みに安定している。正常回転への復帰も素早い。大入力に対して、速度減少はDP-790の1コマに対して2コマ。その後の回復で、オーバーシュートの範囲が小さい。大入力ではやや速度が落ちるが、それに対する回復が正確、と言える。






















DP-790のACサーボモーターに比べ、特性が逆だ。フラッタを示す、細かいユレが目につく。ワウを示す、大きなうねりは少ない。どちらも、平均以上の性能だ。ブログマスター自身が「使いたい」と考えるレベルを満たしている。

PS-3750は、DCサーボモーター特有のコッギングを無くすため、スロット・レス構造になっている。




























































オーディオピープル vol.9 DP-790 テスト



オーディオピープル vol.9 DP-790 テスト

デノン公式情報 これが一番詳細
DP-790 DENON MUSEUM

DP-790ファミリー google

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雑誌「オーディオピープル VOL.9」で行われた、レコードプレイヤー・テスト。
http://5551.verse.jp/pub/audiopeople_vol9/DP-790_test_audiopeople_vol9.pdf

DP-790は、当時のデンオン入門機だ。DP3000を整理したDP-1000モーターを搭載した、DP-1700よりも安い機種。DP-1600からストロボランプを省略した機種。トーンアームは、DP-1700、1600、790と、ほとんど同一。

回転数の調整は、上位機種と全く同じ機能。プラッター内のストロボマーク、ストロボランプは省いている。調整する際には、付属の小さな回転板をレコード上面に置き、蛍光灯ランプや電灯線依存のLEDランプで照らせば、速度のずれが見える。簡略版だが回転性能や、速度安定性はDP-1600と全く同一だ。

そもそも、正常なDP-790なら速度調整は滅多に行う必要はないの、このような面倒な機能であっても、実用上はまったくマイナス点にはならない。つまり、正常なDP-790やDP-1600なら、速度調整を一度行えば、再調整は不要なのだ。(実用上)

さてデンオンの入門機、最安機種のレポートを読んで、高性能に驚いた。ワウ・フラッタ性能の良さはテレメータテストでわかる、もちろん良い。

しかし驚きはアタックテスト(動負荷特性)だ。レコード盤の大きな音を再生した際に、どれだけ回転が安定し、変動しないで回転するか。変動しても、速やかに元の速度に戻るか、のテストでDP-790は素晴らしい! 鬼のように安定して回っている。

特筆すべきは、DP-790はトルクの弱さが指摘されるACサーボモーターを採用していること。ターンテーブルは軽く、その質量(重さ)で外的な回転の乱れ要因を省くことはしていない。

つまり、後の多くの巨大なレコードプレイヤーシステムのように、ターンテーブルを重くして、その慣性質量で回転性能を高める、と言うことをしていないのだ。それにもかかわらず、これだけきれいな回転をしたことを知って欲しい。

当時の評価としては「ACサーボモータはトルクが弱く、頼りない」と言った意見が主流だった。ベテランと言われる人達も「ターンテーブルを手で触ると、すぐに回転が落ちる」の類の、ナンセンスな感想を書いている。レコードプレイヤーの性能としては、ひどい言いがかりといって良い。「ターンテーブルを手で押さえる」ような乱暴な使い方は、レコードプレイヤーには必要ないはずなのに。

実際に使用すると、回転精度は高い。SP-10モーター採用のPD121に比べても、性能が劣ると感じることはない。DP-790やDP-1000シリーズの電源スイッチを切っても、ターンテーブルはしばらく回転し続ける。ターンテーブルの「重さ」で、回転性能を高めているテクニクス製品では、あっという間に停止してしまうのとは違う状態だ。



























DP790、最初のアタックに対する落ち込みが小さい。その後の回復過程で、回転数がややうわずる。いずれにしても、一こまの範囲での変動だ。




























PS-3750 、大入力に対して、速度減少はDP-790の1コマに対して2コマ。その後の回復で、オーバーシュートの範囲が小さい。大入力ではやや速度が落ちるが、それに対する回復が正確、と言える。







DD-5、DP-790の神レベルにはない。DP-790の1コマに対して2コマの落ち込みがある。回復ではオーバーシュートがあり、落ち込みと同じかやや小さな1コマから2コマのうわずりが出る。

DP-790、PS-3750の超優秀に比べると落ちるようだが、これでも大変優秀な範囲。自然なマイナス、プラス、のグラフが印象的。優等生。


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DP-790、テスト結果からの読み取りに限定することだが、最初の「ドン!」に対する回転数の落ち込みがとにかく小さい。だから、それに対する回復の変動も小幅であり、揺らぎの回復にかかる時間が短い。要は大入力信号に対する回転数の変化が全体として驚くほど少ない。

回転数変化の幅が全体にわたって一こまに納まっている。このテストでこの範囲の変動に納まるのはDP790だけ。次点ではPS-3750がわずかに劣り、PL-1250もその後に続くが波形がややいびつ。DD-5もかなり良い結果を出している。

ただ、とにかくDP-790の安定性と、回復性能が秀でている。
































































ワウ、フラッタともテスト画像の転送状態は美しい範疇に入る。この図からは、フラッタ成分がやや読み取れる状況だ。




以下は、本文のテスターによる評価。

行方洋一

非常にスッキリまとめ上げたシステムである。DP-3000に類似したユニークなデザインを使い、高級感も持たせてくれるもので、音を聴いても変なくせがなく、S/Nの良い音が出てきた。

シンプルなデザインのアームはチューニングもしやすく動きもスムーズだ。アームエレベーションの動きも良く、マニアの心を上手くつかまえているシステムに感じた。

なにしろプロ用機器を製作しているメーカーらしさが充分うかがえるもので、使い勝手も抜群によいものだ。しいていえばストロボを外に出してもらいたい感じだ。

(テスト後の総評より)

放送局にある風のデザインとアームの素晴らしさが気に入ったシステムである。しいていえばストロボ・スコープをもう1つ考えてもらえばもっと良いのではとも感じたシステムである。



和田則彦

さすがに回転精度優秀である。ワウは全くといって良いほど聴けず、ごくわずかなフラッタが辛うじて検知される程度である。

強打(ピアノ)で隣溝のゴーストがハッキリ出るのはS/Nの良さを物語っている。

アームリフター昇降の垂直度の正確さもよい。

大きめの白木ボードの仕上げもすぐれており、ノックテストにも縦横ともに強かった。縦ノックのごくわずかな重低域共振はサブソニック・フィルタで退治できる性質のものである。

モーターのスイッチもフェザー・タッチのワン・タッチでよい。

センター・スピンドルのトンガリはレーベルをいためるので感心しないのと、電源表示ランプもストロボ・ランプもなくて、小さくて見にくいレーベルサイズのシートだけなのはあまりにも簡略化のやり過ぎではなかろうか。

とはいうものの、性能面では老舗の貫禄充分のCP(コスト・パー・パーフォーマンス)優秀品である。
























































オーディオピープル vol.9 ワウ・フラッタ・テスト

オーディオピープル vol.9 ワウ・フラッタ・テスト

雑誌「オーディオピープル VOL.9」で行われた、レコードプレイヤー・テスト。

レコードプレイヤーの回転性能をテストする。
ワウ・フラッタ、安定性を画像で診断した。
http://5551.verse.jp/pub/audiopeople_vol9/rev_test_auidiopeople_vol9.pdf

線が細かくふるえるのは「フラッター」を表す。線が大きく歪むのは「ワウ」を表す。画像全体が、斜めにゆがむのは操作ミス。

状態は見ればわかる。テストに参加した機材は、大部分がダイレクト・ドライブモーター搭載機種だ。と言うことは、基本性能は低くない。S/N比 60db以上、ワウ・フラッター 0.03%以下という、当時の平均的な一般性能を持った機種ばかり。

それにもかかわらず、これだけ機種によって性能に差があった、ということだ。実際には、ピアノの弱音等、特殊な状況でなければワウ・フラッタ性能の悪影響を感じることは無かったはずだ。

ブログマスターはSL-20、DP-790、PS-3750、PD131等の機種の画像データに大変驚いた。

SL-20は、テクニクスの最廉価機種。ベルトドライブの安物なのだが。この2万円台の普及品の画像データがこれだけよかったのか、と。

DP-790の総合的な画像の安定性、PS-3750の全体的にしっかりした再現性に感動した。PD131はPD121の化け物モーターに比べて、NIDECのショボイ汎用モーター採用なのにもかかわらず、これだけきれいに回ったのに驚く。

私の一押しのDD-5は、画像を見たときには驚きはなかったが、レビューを読んで画像を見直し、「なるほど」と納得した。

画像を見ると、傾向が似ている機種がある。色々事情を類推する楽しみもある。