2018年3月24日土曜日

Stax UA-7 concept

UA-7コンセプト、カタログより

http://20cheaddatebase.web.fc2.com/needie/NDSTAX/UA-7.html
http://20cheaddatebase.web.fc2.com/LibSTAX/UA-7K.html

UA-7の高音質に驚き、資料を調べた。当時のカタログにコンセプトが子細に掲載されている。内容は、淡々とトーンアームのあるべき姿を述べ、それに向かってUA-7を開発したことが述べられている。

長年トーン・アームやレコードプレイヤーに携わり、何となく漠然と理解していたことが整理され、目が覚めた気分だ。ますますUA-7が好きになった。



























---------------------------------------------------

ハイ・コンプライアンスのカートリッジを軽針圧で使用する場合にも追従性を悪化させない。これを設計の基本として開発された新型アーム、UA-7/UA-70。

UA-7/UA-70の追従性 実効質量

UA-7/UA-70の可動部(シェル→パイプ→軸受)は剛性の大きい軽合金の巧妙な加工により、アームに起きやすい有害な共振を根絶すると同時に、内外各種のカートリッジと組み合わせても実効質量の値は充分に小さく、最も高い追従性が得られます。

実効質量とカートリッジのコンプライアンスで決まる低域共振周波数f0(エフゼロ)は、低すぎればレコードのソリ/偏芯の悪影響を受け、高すぎれば低域再生に問題が起きますが、UA-7/UA-70ではf0は約7~12Hzという理想的な範囲に納まります。

実験のためにシェルに適当な重りを乗せ、実効質量を一般のアームなみに増加してみると追従性が目立って悪くなります。

こうしてみると、軽量アーム、UA-7/UA-70が抜群の追従性をもっていることがお分かりいただけましょう。


UA-7/UA-70の追従性 回転感度

UA-7/UA-70は、尖端が50μRに研磨された精密ピボットによる1点支持と、ボールベアリング外輪で左右傾斜を規制するスタビライザーを組合わせた、軽量2点支持軸受で動作します。

このユニークな方法は動作が極めて鋭敏、極細リード線(50μφ)の摩擦抵抗も含め5mg未満の高感度を示します。回転感度の良否でもUA-7/UA-70は、内外のいかなるアームとも一線を画しています。




構成部品の特徴1 パラ・ショック・ダンパーを採用した(軸受構造)

音響的フィードバックに対し2個のダンパーが、シリーズ・ダンピング効果を発揮し針圧0.1gでもトレースできる能力をもっています。


構成部品の特徴2 クィック・バランスを実現した(シングル・ウェイト方式)

1個のメイン・ウェイトと、その上を前後にスライドするリング・ウェイトで、自重の異なる内外のカートリッジ全てをカバーし、バランスも針圧もきわめて容易に決定できます。(ただし、オルトフォン旧型SPU-Gのみ付属サブ・ウェイトが必要)


構成部品の特徴3 テーパード・リブで堅牢無比の(軽量ヘッド・シェル)

軽合金ダイキャスト・シェル、テーパード・リブにより、著しく強度を増し、捻れ共振は絶無。強度対重量の比がいかなるシェルよりも大きい、理想的シェルです。


構成部品の特徴4 ピボット・ローラーによる(インサイドフォース・キャンセラー)

S字型パイプは、従来よりオフセット角の最適値で選んであるため、インサイド・フォースの値はふううより小さいのですが、特にハイ・コンプライアンスのカートリッジを軽針圧で使うときのために、高感度キャンセラーを開発。一層トレース性能が高まりました。

バランスを取るとき、横流れを防止するため、キャンセラーを簡単にロックすることもできて、使いやすさの点でも申し分のないものです。この他にも、アーム・リフトの精度向上、ノイズ・レスリード線の採用、シェル指掛けの合理的デザインなど、全面的な改良が施されています。

---------------------------------------------























2018年1月26日金曜日

DD-5 SPEED CONT. TROUBLE

MICRO DD-5の故障事例。

70年代のレコードプレイヤーを扱っているが、故障のクレームを受けた記憶は殆ど無い。ゼロではなく、3、4件の事例を覚えている。製品化して出荷した数からすると、信頼性は高いと自負している。

ただ、商品化中に故障が判明して断念、と言う事例はある。SL-10も、SL-1200もあった。出品時にきちんと商品化したプレイヤーの信頼性は低くはないのではないか、と思っている。

DD-5、「速度がノー・コントロール状態になる」という事だった。もちろん整備は行っていて、手元にあったときには何の不安もなかった。

ユーザーがビギナーのため、状況がよくわからなかったが。「33回転だけ、異常が出る」ということで、故障を確信し、返送を受ける。

「45回転は問題ない。33回転が異常」というのなら、故障箇所はわかる。サーボ・アンプ以前の、抵抗回路の異常だ。アンプ本体の半導体、トランジスタやダイオードの劣化なら、どの回転数も異常になる。

---

チェックを始めると、1時間以内に異常が出た。33回転が極端に早くなってしまう。33の抵抗値が極端に減少するためだろう。





















速度切り替えS/Wを分解、清掃する。エレメントの劣化のため、使用中に抵抗値が変化することは起こりうる。密閉型のS/Wのため、分解は困難。正直、したくない仕事。手順を踏み、一つ一つパーツを剥がすと、「ぽろ」とバラバラになる。再組立を考えると、「ぽろ」は有り難いとは思えない。エレメントに、#3000程度のペーパーを通す。

さらに、速度微調整VRを新品交換。10KΩ。もちろん、事前に調整したパーツだ。

さて、両者を交換し、再テスト。異常はまったく改善しない。意を決して、モーター制御基板上の速度微調整VRを交換する。




























問題のVRを剥がそうとしてのだが、軽く力を加えるとバラバラになってしまった。20KΩ、設定値は約9.2K。半田を剥がし、在庫品と交換する。

組み立てて走行テスト。全く問題なく回転する。やはりこのVRの劣化だったのだろうか。大変まれなケースだが、「よくあること」との説もある。
人の手に触れるパーツではないので、劣化原因は不明。熱による、金属疲労なのか。

---

さて、再出荷。これでお終い、と思っていたが。「また同じ現象になる」というクレームを受け、再度返送してもらう。「33も45も異常だ」と言うことなので、どうしようもないのか?回路基板の半田不良か、半導体の劣化、が予想できるが。正直、こうなると修理コストはペイしないのだ。

とりあえず、自分のメイン機と交換し、日常的に使ってみる。全く異常は出ない。

「そもそも、異常は出るはずはないのだ」とうそぶいてしまう。

しかし異常はあった。10時間以上回転させたあげく、やはりノー・コントロール状態。異常に速度が速くなるのは33回転のみで、45回転は異常は出ない。速度切替えS/Wを何度も操作しても変化はない。電源を切り、30分ほど冷ますと、まったく正常になる。その後は、10時間以上のテストをしても正常だ。

やはり、速度微調整回路、周辺部の配線不良、半田クラックなのでは?

念のために、速度切り替えS/W、速度微調整VRの配線をやり直す。その上で、モーター制御基板上の速度微調整VR周辺を見直した。

交換したパーツなので、本来異常は出るはずはない。念のために、33回転のVRを基板から剥がす。その際に、パターンの剥がれを発見する。前回、VRを剥がした際に壊してしまったのだろう。この部分の導通が不完全なため、回転中の熱で基板全体が熱せられると抵抗値が異常になったのではないか?

ユーザーは、45回転の異常もクレームしている。45回転も異常だとしたら、33回転のVR半田エラーが原因という仮説は成り立たない。

しかし、現状で33回転のみの回転が異常なら、この半田エラーが原因としてつじつまは合うのだ。

そもそも、45回転のVRも劣化していたのではないか?そのために、ユーザーの使用中には異常が出た、と言う可能性はある。

結局、33回転、45回転の制御器盤上VRを交換する。33の傷んだパターンはジャンパー線を飛ばす。その上で、周辺パターンを注意深く再半田する。この問題が原因なら、これで完了のはずだ。

































半固定VRを交換した、モーター制御回路基板

組立を行い、この状態で20時間以上ランさせているが、異常は出ない。これで解決としたいところだ。